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( episode 09 )

事業承継ハック!承継のリアル大公開 ~㈲伊藤商事様編~

事業承継ハック!承継のリアル大公開 ~㈲伊藤商事様編~

 

家業を継ぐ、その先へ

6代続く地主家系に生まれた後継者が語る、事業承継のリアル

熊本市で不動産賃貸業を営む有限会社伊藤商事の伊藤社長。
祖父の代から続く法人を継ぎ、現在は3代目代表取締役として経営を担っています。
今回の対談では、承継のリアルとこれからの経営について、聞き手・岡本が深く掘り下げました。

 

対談者紹介

話し手:伊藤 史織 様

有限会社伊藤商事 代表取締役。
体育大学に進学後、サッカー部に所属し、組織の中での役割や責任感を培う。卒業後は東京にて運送業、小売業、不動産業と異なる業界で経験を積み、ビジネスの現場で実務力を磨く。29歳で熊本へ帰郷し、家業である不動産賃貸業を営む有限会社伊藤商事へ入社。法人としては3代目代表として事業を承継。伊藤家としては6代目にあたる。

聞き手:岡本 夏樹

想いをつなぐ事業承継 代表

株式会社そうごう保険SHOP 代表取締役。

岡本自身が父の相続で事業承継を行っている。自らの経験や顧客の相談事例をもとにお客様の事業承継の支援を行っている。

 

 

地主から始まったビジネスの本質

岡本:よろしくお願いいたします。

御社の事業は、いわゆる不動産会社とは少し違う印象を受けました。
仲介や売買ではなく、保有資産をどう活かすかに重きがあるというか。
そのあたりの考え方や背景を教えていただけますか。

伊藤:もともと地主の家系で、祖父の代で会社化した流れです。
なので、事業の出発点は「土地をどう活かすか」にあります。
自社で持っている土地に建てて貸す、いわゆる大家業ですね。
短期的な利益よりも、長期的に価値をどう維持するかを重視しています。

 

TSMCバブルと「動かなかった判断」

岡本:熊本はTSMCの影響で不動産市況が大きく動きましたが、現場としてはどう見ていましたか。かなり強い上昇圧力があったと思いますが、実際の意思決定はどうだったのでしょうか。

伊藤:正直かなり振り回されましたし、「今買わないと無くなる」という空気はありました。
ただ、冷静に見ると相場が歪んでいる感覚もあったので、うちはあえて動きませんでした。
結果的に固定資産税の上昇など影響はありましたが、無理に乗らなかったのは良かったと思っています。
長くやっていると、どこかで落ち着くという感覚はやはりありますね。

 

承継は“ある日突然”始まる

岡本:事業承継についてですが、段階的に準備されていたというより、
かなり一気に引き継がれたと伺いました。その時の状況を教えてください。

伊藤:本当に突然でしたね。今年の1月1日に前社長の父から通帳と印鑑を渡されて「自分でやれ」と。
それまで細かい引き継ぎはほとんどなく、その日から経営者という感覚です。
父も祖父から同じように引き継いでいるので、そういうものだと思っていたのかもしれません。
承継というより、“その日から責任を持つ”というスタートでした。

 

不安はない。ただし「数字」は別

岡本:そのような状況でも、不安はあまり感じなかったのでしょうか。
承継時の心理的な部分についてもお聞きしたいです。

伊藤:不安は不思議とありませんでした。小さい頃から継ぐ前提だったので。
ただ一番大変だったのは数字で、財務や資金繰りをいきなり任されることですね。
それまで他人事だったお金が、全部自分の判断になるという感覚は大きかったです。
毎日通帳を見るようになって、初めて“経営している”と実感しました。

 

株式承継というもう一つの課題

岡本:事業承継では経営だけでなく資産、特に株式の問題も大きいですよね。
そのあたりはどのように進められているのでしょうか。

伊藤:会社が良くなるほど株価が上がるので、そこが難しいところですね。
後継者の努力が、そのまま承継コストになる構造は感じています。
だからこそ、経営と並行して早めに対策していく必要があると考えています。

 

ファミリービジネスの「感覚」

岡本:同族経営については、どのように感じていますか。
一般的な企業とは違う部分も多いと思いますが。

伊藤:うまく言葉にはしづらいですが、“家業としての感覚”は確実にあります。
小さい頃から自然と身についている責任感や考え方があるというか。
新しく起業された方とは、視点が少し違うと感じる場面もあります。
それが強みにもなるし、逆に変化を遅らせる要因にもなり得ると思います。

 

「家業」から「企業」へ

岡本:今後の方向性については、どのように考えていますか。
承継後の変化や、これから取り組みたいことがあれば教えてください。

伊藤:これからは家業から企業へと進化させていく必要があると感じています。
親族だけでなく外部人材の活用や、組織としての体制づくりですね。
また、自社資産だけでなく、他のオーナー様の物件管理にも広げていきたい。
地域全体の資産を守る役割も担えたらと思っています。

 

不動産の先にある「まちづくり」

岡本:お話を聞いていると、単なる不動産経営ではなく、
まちづくりに近い視点を持たれていると感じます。

伊藤:そうですね。「ここに何があれば人が集まるか」という視点で考えています。
レジャー施設や商業施設など、“目的地になる場所”をつくりたい。
不動産は最終的に人の流れがすべてだと思っています。
地域の価値を上げることが、結果的に事業にもつながります。

 

最後に

岡本:本日はありがとうございました。承継のリアルと未来の方向性が非常に印象的でした。

伊藤:こちらこそありがとうございました。まだこれからですが、
地域とともに成長できる形をつくっていきたいと思います。

 

編集後記

承継とは、単なる引き継ぎではなく「責任の受け渡し」。
そしてその先にあるのは、“守る”から“創る”への進化です。

伊藤社長の取り組みは、
事業承継のその先にある新しい経営の形を示しているように感じました。

 

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